わるのり 2011年05月26日 純ネタ トラックバック:0コメント:0

(前回のあらすじ)
ラブワゴンの運転手のウェチャガイさんから告白チケットを貰い、昨夜想いを伝えた勇治。
果たして真奈美は勇治とキスして一緒に日本へ帰るのか、それとも…


勇治「おはよう」

真奈美「おはよう」

勇治「…俺の気持ちは、昨夜伝えたとおりなんだ。俺は真奈美と一緒に6カ国ぐらい旅してきて、バルト3国が何故か4カ国あったことを除けば、もう真奈美の事しか考えられなかったんだ。あ、あと、ウズベキスタンの子供たちが歓迎の印とか言って甘辛く煮たなんかの豆を俺の旅行カバンに入れだした時も除いてはね。俺は真奈美の気が強くって、それでも実は弱い所もあって、そして何より明るいその性格がすごい好きなんだ。一緒に日本に帰ろう!」

真奈美「告白してくれてありがとう。私も前から勇治のことは気になってて。っていうか、ウズベキスタンの子供たちに何故か甘辛く煮たなんか良く分からない品種の豆をカバンに入れられてる勇治を見て、輝いてるなって思った。ほんと勇治はいつも優しいし、人が気づかない所にもすぐに気付いてくれるし…で、でもね、…(グスッ)」

勇治「真奈美…」

 
 
真奈美「でもなんていうかその、無理って言うか、その、まあ、えっと。無理とは言わないんだけど、言わないっていうか、その、思っていないっていうか、無理と言う表現はこのケースでは違うって言うか、ごめんね、へんな感じになっちゃって、でもね、その、私は勇治の事が決して嫌いではないの。嫌いではないんだけど、じゃあ逆に好きかって聞かれたら、まあ、それはそれでなんか違うかなって言うか、その、さっきも言った通り、決して嫌いではないし、ましてや嫌悪してるとか憎んでるとか、そういう感情も一切ないのね、でも好きって言うのはまた違うと思うの。分かるかな?なんて言ったらいいんだろう。好きとか、そういう言葉では表せないと思うの。あっ、だからって、『好きという言葉では言い表せられない程に好き』というわけじゃなくってね、それはそれで完全に誤解というものなんだけど、何て言うんだろ、その、好きという言葉の持つニュアンスとはまた別のニュアンスを持つ何かというか、とにかく好きではないの。嫌いではないし好きでもない、しかしだからと言って興味が無いだとか、普通だとかいう安易な表現で片づけてしまいたくもないのね。それとはまた違うの。私にとって勇治は普通だとか言うのは、それはおかしいし、失礼だし、私の本意じゃないわ。勇治も多分こういうこと経験があると思うし、分かってくれると思うんだけど、あの、『好きではないけど、だからといって嫌いでもない、しかも普通とか関心が無いとでは全くない』みたいな気持ちあるじゃない?あるでしょ?あれに近い感じなの。言葉にするって本当に大変だよね、今になって気付いたわけじゃないんだけど、改めて考えて見るとすごく難しいわ、IQテストみたい。でも昨夜勇治は勇気を出して私に告白してくれたわけじゃない?勇治なだけに。だから私も曖昧な気持ちだからって適当にはぐらかしてこの場を治めたくはないのね。それじゃあ勇治の勇気を踏みにじることになると思うから。勇治なだけにね。ほら、私自分に正直なところあるから、そういう曖昧な態度とか逃げって許せない性質なの。だから一生懸命に今考えてるんだけど。うーん、そうね、それじゃあまずここまでのポイントを確認の意味も込めておさらいしましょうか。まず私は勇治の事を、1:嫌いではない2:好きでもない3関心が無いわけでもない、この三点ははっきりとしているの、夏の快晴の日の富士山みたいにね。でも、その、なんだろうな、今回は勇治も告白ということで私と日本に帰ってより深い関係を築きたいと言ってくれている観点から考えると、とりあえずそのぐらいの気持ちが私にもあるのかないのかという点において返事をするしかなくなってくると思うから、そういう点で答えさせてもらうと、大好きだとか、結婚したいだとか、これから二人でしばらく同じ時を共有して、愛を育んで、やがては結婚を前提にする関係を目指そうと思える相手かどうかと問われると…、うーん、難しい所なんだけども、それはなかなか厳しいんじゃないかなと考えるのね、私個人としては。なぜそう思うのかと考えてみてもね、その、特別勇治に対して嫌に思ってる個所とか、ここを直して欲しいとか、そういう何か明確な不満みたいなものがあるわけでもないのね。なんでそういう結婚を前提とした関係になれないのか、どこがどうダメなのかが私自身でも分からないの。でもほらそういうことってあるでしょ?自分で自分が分からない、みたいな?そりゃそうよね、皆が皆、自分で自分の事完全に分かってたら誰も思春期は苦労しないし、学者たちも自己同一性の確立が云々とか言い出さないし、アデンティティーの歪みから発生する各種の凶悪犯罪とかもあり得ないものね。あ、それでええっと、何の話だっけ?あっ、そうそう、だから私が勇治と一緒に日本に帰ってもっと深い関係になろうとは何故か全く不気味なほどに思えないという話だったわね。とにかくそう、なんかもういろいろと無理なの。無理なのよ私たち何もかも。なんかもう勇治がバルト3国を旅してる時に『バルト3国って、バルト3国なのに4カ国あるんだぜ!』とか言い出したところでなんかおかしいと思ったのよ。おかしいのは正直勇治の方だと思うんだよね。私あんまり人のせいとかにしないタイプの性格だけど、お嬢様育ちだし、でもこればかりは勇治の方がいろいろとおかしいと思うのよね。…ということでね、まあ、その勇治と一緒に日本に帰るのは無理と言うか、限りなく無理に近い無理というか、なんというか、果てしなく無理に近似した無理というか。無理にも程があるというか、無理以外の何物でもないというか、まあ要約すると、無理。」


勇治「……うん」


涙ながらに、簡潔かつ明瞭に自分の今の気持ちを伝えた真奈美。
二人は熱い握手を交わした後、それぞれの道へと戻って行く。

せめて最後だけは勇治に涙を見せずに去ろうと泣くのを堪え、ラブワゴンの方へと振り返る真奈美。



ラブワゴンは無かった。

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