3LDKバルコニー付き神話大系 2010年06月22日 純ネタ トラックバック:0コメント:0


「あっ、お母さん、どこに行っていたの?また例の『他人のpasmoをへし折って周る会』?それとも『家電屋さんでパソコンについて散々質問したあと結局何一つ買わずに店を出るサークル』?あ、もしかして『まだ全然ハゲてない人に将来ハゲると執拗に脅して不安にさせる自治体』かな?ぼくあれからすっごく頑張って今日学校でね…」

「そんなことよりリッツパーティーしない?」

「待ってました!!」


「それにしても最近何だか身体がダルいんだよね。」

「なんですって、それはもういろいろあれね。なんて言うかもうあれね。すごいわ、もうここまで来ると逆にすごいわ。あれ過ぎてなんかもう瞳孔開くわってわたしゃメルカトル図法か!」

「お母さん。」

「何かしら?」

「ぼく将来アリの巣に水を注ぎ込むことに快感を覚えるような外資系企業に入りたいんだ。」

「まあ、それは素敵なことね。死ねばいいのに。」

「だからぼくに進研ゼミやらせてよ!ねえお願いだよぼくに進研ゼミをやらせておくれよ!ねえいいでしょ、一回だけ一回だけ!一回やったらすぐ帰るから、なんなら先っぽだけでもいいから!」

「しつこいわね!これだから三等市民は嫌なのよ!!」


そういうと母親は目からコンタクトレンズを取って7tトラックへと投げつけた。
弧を描いて一直線に飛んでいくコンタクトレンズ。
それはまさに男の子の今の心境を如実に表しているかのようであった、と思ったけどよく考えてみたらそんなに言うほどは如実に表していなかった。


「全くもう。せっかくのリッツパーティーが台無しというものよぼくちゃん!」

「ごめんなさいお母さん。」

「ちょっと、ちょっと待って!おかしいわ、リッツの中に一つだけカントリーマアムが混じってる!!何これどういうこと、そんな、うそ、でも、そんなはずは……ま、まさか、ロドリゲス兄さん?これはロドリゲス兄さんの仕業なの?だとしたらあたし許せない!アルフォートならばまだしも、カントリーマアムだなんて!アメリカの東海岸辺りの白人のおばさんがどや顔で作ったカントリーマアムだなんて!!」


すると一人のタキシードに身を包んだ、落ち着いた雰囲気の紳士がやって来た。


「奥さん、今何味のカントリーマアム食べてらっしゃるのですか、ハアハア…」

「んもうっ!出て行ってください!」

「そんな、奥さん誤解です、アトランティスは確かに存在した、存在したのです!」

「ウソだい!」

「ぼ、ぼくちゃん…」

「ははは、これは失敬。お詫びにどうぞこれ今朝うちの庭で獲れたカントリーマアムです。」

「ええ!本当によろしいんですか?あたくしカントリーマアムには目が無いんです!カントリーマアムが好きすぎて4歳の頃からピアノ習ってたんです!」


日差しが段々弱まってきた。
東南アジアでは今この時にもあんなに日差しが強いというのに。
ここロンドンの日差しは段々弱まってきた。
東南アジアではあんなにも日差しが強いのにも関わらず…。


「お母さん。」

「なに、ぼくちゃん?」

「『特殊相対性理論』ってなに?」

「そうね、ちょと説明するのが難しいんだけども、それを説明するにはまずお父さんとお母さんの馴れ初めから説明する必要があるわね。お母さんとお父さんは大学でバッファローの群れの中に身を任せていた時に出会…」

「なるほど!」

「そうなのよ。まさかあそこで戦略的破壊兵器削減交渉に調印することになるとは誰が思ったかしら。」

「それはある意味時代を先取りした墾田永年私財法的なサムシングだね。」

「いや、それはどうかしら。」

「お母さん、ぼくなんだか何の罪も無い道行く人々にジャワカレーをかけて周りたくなってきたよ。」

「え?それは80年代の芸能界的な意味で?」

「迫って来るよ!助けてよお母さん、八百万の神様が迫って来るよ!!」

「え?『やおよろず』ってなに?えーこわ、なにそのひらがなたった五文字に内包された驚くべき脅威。」


アイダホのポテトはうまいのか、うまくないのか。
それはさて置き陽気な昼はまだまだ続く。


「もうね、お母さんね、ここまで来たらもうありなんじゃないかなと思うの。これからの金曜ロードショーはもう毎回ターミネーターの繰り返しでいいんじゃないかと思うの。」

「それはさすがにどうかと思うよ。そんなんだから脳内メーカーに自分の名前入れたら脳の中全部『殺』って出て来るんだよ。お願いだからバミューダ・トライアングルに引っ越してよ。」

「っていうか『超マジむかつくんですけど?』って言ってる人って大抵そんなに怒ってないよね。」

「そうね、お母さんもそう思うわ。ペプシコーラは毎回毎回誰かに脅迫でもされてるのかしらと心配になるほどいろいろとトリッキーな味のコーラに挑戦していて、もうなんかこいつらこそが或る意味一番のベンチャー企業なんじゃないかしらと思うわ。」



すると一瞬。
爽やかな風が吹き抜けた。



「ねえぼくちゃん。人生の意味ってなんだと思う?」

「なんだろうね。考えたことないや。」

「そうよね、分からないわよね。お母さんはね、アタック25に出演して絶妙な位置にアタックチャンスのパネルを入れて見事に形勢大逆転勝利をおさめることにあるんじゃないかと考えているの。」

「でもぼく児玉さんが回答者としてクイズに挑んだら果たして優勝することができるのか、そして最後の国当てクイズにも見事正解してフランス・パリ3泊4日の旅を獲得することができるのか気になって仕方がないよ。」

「狙うわよ。児玉さんならびっくりするほど貪欲に角を狙っていくわよ。」

「やっぱりそうなのかなあ。」

「ええ、そして予期するわよ。アタックチャンスの鐘の音が鳴るタイミングを完璧に予測するわよ。」

「へえ?、やっぱり長年の司会者経験から得るものがあるんだね?。」

「でも児玉さんはね、時々とても悲しそうな顔をするわ。アタック25で執拗に角を取り続け、そして優勝し続けることに対して自ずと疑問を抱き始めるわ。そんなことに果たして意味はあるのかと何度も考えるわ。そして児玉さんは収録終わりに遠い目をしながら楽屋で濃い緑茶をすするの。」

「児玉さんと言えども人生の数々の難問には手も足も出ないってこと?」

「そうね。しかも何とも悲しいことにね、人生のクイズにはとても難しい問題がたくさん出てくるというのに、一度でも間違えたらすごく長い間ペナルティとして横に立っていなくちゃいけないの。だから人は失敗して間違った答えを言うのを恐れて冒険することなんてなかなかできないの。残念ながら児玉さんとて例外ではないのよ。」

「どうりでアタックチャンスを宣言する時の拳があんなにも震えるわけだ。」

「そうよ。あれは人の人生にチャンスを与えられるという喜びに震えているというわけよ。」

「へえ?、やっぱり児玉さんはすごいや!ぼく将来は児玉さんみたいな大人になりたいやって思いかけたけどよく考えたらそうでもなかったよ!」

「ところでお母さん来週から週刊少年ジャンプに週一で連載持つことになったから。」

「ええ、ほんと!?タイトルは!?」

「『定時帰りのマサオ』よ。最近の少年漫画誌は冒険ものや格闘ものの漫画で質の良いものが多くて新規参入はかなり不利だとふんだのよ。それで今一番ウケる漫画の設定って何かしらと考えたところ、冒険要素とギャグ要素とほのぼの要素と哲学要素とホラー要素の全てを兼ね備えた斬新な設定の漫画ならいけるとお母さんふんだのよ!」

「カスみたいな発想だと言わざるを得ないよ。」

「来るわよ。お母さんの描く漫画がこち亀の連載記録を塗り替える時がいずれ来るわよ。」

「『定時帰りのマサオ』ってなんかちょっとジブリの『かりぐらしのアリエッティ』とか『崖の上のポニョ』とか『風の谷のナウシカ』とか『天空の城ラピュタ』とか『魔女の宅急便』みたいに『○○の○○』っていうパターンとなんだか似ているね。」

「正直、駿が母さんのアイデアをパクったとしか思えないわ。」

「ええ?、世界に名だたる偉大なアニメ監督にまさかの濡れ衣を着せだした。」

「正直母さんの『定時帰りのマサオ』が映画化したら軽くラピュタ抜くと思うの。」

「母さん、ぼくもうそろそろ手が出そうだよ。」

「まあ、まずはジャンプで子供から大人まで幅広い世代の人々の心を掴んで離さないというところから地道にしっかりとキャリアを重ねていこうとは考えているのよ、忙しくなるわ。」

「『定時帰りのマサオ』という名前からだといまいち冒険要素とか格闘要素が見えてこないんだけど、どういう感じでマサオは闘ったりするの?やっぱりバキとかみたいにすごくかっこいい描写がふんだんに盛り込まれてるの?だとしたらぼくすっごく楽しみ!わくわくしちゃうなあ?!」

「ええ、基本マサオは毎日定時に帰るんだけど、その際の周りの社員や上司からの『定時に帰るな』という無言の圧力と日々闘っているわ。」

「ぼくのわくわくを返してよ!!」

「というかマサオ握力30キロぐらいしかないから。」

「給湯室にたむろするOLといい勝負だよ!情けなっ!」

「そしてマサオは周りからの圧力をびっくりするほど意に介さず、これまたびっくりするほどの澄まし顔で定時に早足で颯爽と退社するわ。」

「ただの空気読めないサラリーマンの話だよ!」

「違うわ!マサオは空気が読めないんじゃなくって、空気を読まないの!勘違いしないで!!」

「実の母親に見たことないくらいの鬼のような形相で怒られた…。なんかごめんなさい。」

「分かってくれればいいのよ、ごめんねぼくちゃん、お母さん急に怒っちゃったりして。でもそこだけは譲れないの。母さんマサオのそういうこだわりだけは誰にも譲れないのよ。」

「マサオのあえて空気読まない設定にすごいこだわり持ってるこの人…。」

「っていうかマサオはもうどちらかというと勤務中も基本仕事してるふりしてyahoo!オークションしてるから。」

「ええ?、マサオどこまで堕ちるのさ。」

「偶然良さそうな色のジーンズが出品されてるのとか見たらもうマサオ眼の色変えるから。眼の色変えて全力でそのジーンズ落札しに行くから。落札した際にはパソコンの前で『っしゃあ!!』て叫びながら見たことないほど綺麗なガッツポーズするから。」

「なんで就職したんだよ!!」

「そんなことをしていたらもちろんのことクビになって再就職先を探す旅に出るわ。」

「それが冒険要素だとでも言うの!?ワンピースに今すぐ謝ってよ!」

「まあ、いくらぼくちゃんとは言え、連載が始まる前からあんまりあらすじとか言うわけにはいかないわね。続きは実際にジャンプに連載してからゆっくりと楽しんでね。なんならもう単行本とか全巻揃えて家でゆっくりと閲覧すればいいのよ。」

「そこは直接くれたりはしないんだ…。」

「とりあえず母さん今マジでこれに命かけてるから。今の母さんもう『定時帰りのマサオ』でジブリと全面戦争することさえも辞さない考えだから。そこんとこよろしく。」

「ボロ負けだよ!ゲド戦記にさえ束になってかかっても勝てないよ!」

「ところでぼくちゃん急にツッコミキャラに豹変したのね、お母さんびっくりよ。」

「マサオのツッコミどころの多さにはさすがに抗えなかったよ。」

「ぼくちゃんも何かそういった夢を持たなくっちゃ。」

「そうだなあ。ぼくにはまだ夢なんて呼べるものは全然ないなあ。あえて言うなら徹子の部屋を買収してそこで小粋なバーでも開いて社会人の恋を応援することぐらいかな。」

「徹子は正直無理あるんじゃない?」

「うん、でも目指す前に諦めたくはないから。」

「そうね、でも徹子のフェイントからのボディブローは恐ろしいほど鋭いから気を付けるのよ。」

「大丈夫だよ。いざとなったら身体を差し出すよ。そして子犬のように泣いて謝るから。」

「それならば安心というものね。」

「そうだよ、ぼくのこの雨に打たれた子犬フェイスというスキルはこれからの人生において至上の強みだと自負しているよ。六本木の高級マンションの前でこの表情で立っているだけでセレブどもはぼくを養いたくなるのさ。」

「まあ、ぼくちゃんったら。」

「あっ、そうだお母さん、前に聞こうと思って忘れてたんだけどさ、『マチュピチュ』ってなに?」

「とうとうそれを教える時が来たようね…。良い?心して聞くのよ。マチュピチュっていうのは優先席に若い人が座っていてお年寄りの人たちが座れない状況の時に叫ぶとすぐさま問題が解決する魔法の言葉なのよ。」

「ええ!ぼくずっと夜の東京23区を歩いていたらどこからともなく聞こえてくる唸り声だと思ってたよ。」

「よくみんなそう勘違いをするのよ。『確信犯』という言葉の本当の意味と同じくらい間違いやすいのよ。」

「どうりでこの前夜に御徒町を徘徊していたというのにマチュピチュ音が全く聞こえてこなかったわけだ。」

「あとマチュピチュていうのは『生き別れた息子と親が再会した時の効果音』でもあるわ。」

「ほんとに!?あれ?でもよくテレビの番組の企画とかで生き別れた親子を再会させたりしてるけど、その時『マチュピチュ』っていう音なんか全然聞こえて来なかったけどなあ??」

「それは番組がやらせだからよ。」

「なるほど!だから微塵も『マチュピチュ』って聞こえて来なかったわけだ!」

「そうね、つまりマチュピチュという音がするかしないかでその番組がやらせか本物かが判明してしまうのよ。」

「すごいやマチュピチュは!!」


日はすでに落ちかけ、辺りはすっかりと夕日の色に染まり始めていた。
二人がたたずむ静かなその庭とは対照的に、どこからともなく聞こえてくる音だけが二人を包んでいた。
そう、『マチュピチュ』という音だけが、周りに木霊していた。

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