弁当のおかずがベルリンの壁で仕切られている 2013年08月15日 妄想 トラックバック:0コメント:0

JASRACだって!?何が音楽著作権だ!?何が著作協会だ!?しゃらくせえ!!!

そう烈しい怒りに駆られた僕は、JASRACに直談判しに行こうと夜の街へと勢い良く飛び出した。
息切らせながら数十分走り周った後、あった!ありよったで!「JASRAC」と書かれた表札を掲げたアパートの一室がよお!

僕は烈しく乱れた呼吸を整える暇も設けずに、強めの力でJASRACの部屋の扉を叩いた。
背中の汗は夜の冷気で早くも僕の背中を冷やし、それが興奮する胸の熱さと相反することで、まるで、もうここまで来ては戻れはしない、今の自分を取り巻く状況を表すかのようだった。
夜の住宅街の電灯は怪しくパチパチと音を立て、どこかの犬は遠吠えの声を上げている。

JASRAC「はーい、どなたでしょうか?」

すると次の瞬間、金髪と蒼い目を携えた、お手本のような西洋系白人の美しい女性が少し怯えた表情で出て来た。
僕は想定外の意外な相手に思わず戸惑いの表情を隠すことができなかった。

「お、おう、お前がJASRACかてめえこの野郎。なにが著作権管理だこの野郎、か、勝手なことをしやがってこの野郎…」

緊張のあまりこの野郎を必要以上に言ってしまう。
次の瞬間、JASRACと思しき女性は少し申し訳なさ気な調子で言った。

「す、すみません私…」

沈黙が予想以上に続いて、なんだかこちらが悪いみたいに感じてきた僕は、なんとか話を穏便な方へと持って行こうと模索した。

「い、いや、そんな、べつにあれなんだけどさ、君を責めに来たわけじゃないんだけどさ…」
「それじゃあ、とりあえず中へどうぞ」

僕は意外にもJASRACの部屋の中に招き入れられた。
部屋の中はシンプルでありながら上手く家具の配置がされて整っており、好印象を受けずにはいられない部屋だった。
ラベンダーのアロマオイルの香りが薄く漂って仄かに意識に触れてくる。

「話の続きなんですけど、私も本当は著作権とかにあまり厳しくしたくはないんです、でも、いろいろありまして…」

そういって彼女は手前のマグカップへと視線を落してしまった。
こうなるとさすがの僕も勢いを削がれてしまう、とても責め立てる気になどなれるわけもない。

そのような話を聞かされて僕の感情はますます穏やかな、いや、好意の塊のようなものへと移っていった。
そう、まず彼女は、JASRACは美しい外国人女性であったのだ、そして、なにも横柄に著作権管理という、自らは何も生み出さない、ハイエナ的な商売をしていたわけではなかった、彼女自身も悩み、傷つきながら、自問自答を繰り返していたようなのだった。

僕は彼女に恋をした。
突然のことではあるけれど、恋には必ずしも醸成の期間は必要ではないと思う。
僕は彼女を、JASRACを、愛してしまったのだ。

激しく燃え上がる情熱は全てを衝き動かす。

僕は愛の歌を歌った、JASRACのために情熱の限りを込めて、自分が大好きな歌手の大好きな恋の歌を歌った。
JASRACはとてもとても喜んでくれた、目を真っ赤にしながら、泣きながら笑っていた。
とても嬉しいと喜んでくれたのだ、自分もあなたが好きになってしまったのだと。

しかし、次の瞬間、JASRACは切ない表情に変えて言った。

「ありがとう、とても嬉しいわ。…でも」

少し曇った眼差しを下に向けたまま俯く彼女。
やはり僕の彼女への想いは伝わり切らなかったのだろうか、それとも何か事情があって僕とは付き合えないのだろうか?
僕も彼女と同じく曇った眼差しで下の方を見、彼女の発言を、判決を待つかのように静かに佇んで待った。


「今、特定の歌手の歌を歌ったから、著作権料をもらわないと」


あ、やっぱりこいつJASRACだわ。
そう思いながら僕は、にやにやしながら財布からお金を出した。